皆さんも良くご存知の手塚治虫氏の「ブラックジャック」だが、
日本人キャラで、パイプを片手に現れる唯一といって良い存在だ。
確認できている231話のうち、パイプが出てくるのは38話で、
パイプ登場率は16.5%。
ブラックジャックは、関東近郊T県の海岸近くにぽつんと建つ、
古びた1軒屋で開業しているが、そこで、いつ来るともわからない
患者が来るのをパイプをくゆらせながら待っているのがいつものスタイルだ。
自宅でくつろいでいるときや物思いにふけりたいときに
パイプをくゆらせているシーンが多く描かれているが、
患者の前でたばこを吸うことはない。
残念なことにパイプたばこ自体が書かれていないため、
銘柄については想像の域をでないが、73年から81年ごろならば、
銘柄は少なく、絞り込むことは可能だ。
第177話「死への1時間」で、手術後に、貧しい少年に買ってこさせた紙巻を
大きく吸い込んでいることから、アロマティックなものよりは、たばこ感あふれるタイプのものを、
時々は肺に入れながら吸っていたのではないだろうか。
また、ネイビーフレイクなどの硬くしまったものは、そのときどきにほぐさねばならず、
神のごとき繊細な指先が汚れることを嫌がったかもしれない。
愛用のメシャムパイプの肌を汚すかもしれないし・・・。
作中で彼が得た報酬は、漫画研究家・豊福きこう氏によれば、
通算で212億1500万円あまり、他にも第81話「宝島」登場人物のせりふ中に
「ざっと100億ドル」という言葉があるとおり、莫大な診療報酬を得ていたことは確かで、
高価な煙草も吸い放題のように感じられる。
しかしながら、「世界中の銀行を調べたがほんの二、三百万しかあずけてねえな、ふしぎだ」
(同第81話宝島より)というように、報酬のほとんどは、彼の生き方を決定付けた
不発弾爆発事故関係者への復讐。それに、患者治療経費、自然保護のための
小島数箇所の購入に消えていったようだ。
彼の好物は「お茶漬け」で、日々の食事は「カレーライス」が多く、
質素な生活を送っていることから、ことさらにたばこに金をつぎ込むことは
していなかったのではないかと思う。
このことから、手に入りやすく、たばこ感もあって柔らかい刻みの、
「桃山」が有力な候補と考えられる。
ただ、彼が愛した医局の後輩、如月恵が、彼自身の手による子宮ガン摘出手術後は、
男の船医として世界中を回っていること(第50話「めぐりあい」、第205話「海は恋のかおり」)
を考えると、彼女を思い出しながら「クルーズライン」をくゆらしている・・・
という想像も捨てがたいものではあるのだが。
(西東京煙管愛好者倶楽部 松崎 臥煙堂「ぱいぷ」2005・5・10より引用)
今回登場したパイプたばことパイプ
桃山
100g
2400円
クルーズライン
50g
1900円
メシャムパイプ
喫煙を重ねるほどにボウルがあめ色に変わっていく。
パイプマニアは必ずといっていいほど1点は持っている。